食文化こぼれ話Part5-4(2) 「こぼれ話」の中の「こぼれ話」2017/05/22(Mon)
♪前回に続き今回は、首都圏、北陸、東海、近畿地方の都府県の『「こぼれ話」の中の「こぼれ話」』をご紹介します。
☆東京都
♪「Part3」に江戸の蕎麦について書きましたが、蕎麦とともに「天ぷら」と寿司も屋台で、主に庶民によって食べる文化が生まれました。
○[こぼれ話]:「天ぷら」は、武士は食べないのが普通でした。食通の徳川家康が、鯛を油で揚げたものを食べて体調が悪くなりました。このことが大げさに伝わり、「家康は、“天ぷら”を食べて死んだ」とさえいわれました。その後、江戸城内では“天ぷら”を揚げることが御法度となったそうです。本当は、天ぷら油で城が火事にならないようにするための理由付けだったようです。
☆千葉県
♪「Part3」でお伝えしましたように、千葉県の「醤油」生産量はダントツで日本一です。
○[格言]:「醤油」は、ほぼすべての料理に合い、味のないものにも味を付ける大変大切な調味料です。沖縄にも醤油の大切さを表した格言があります。それは、『アマダイミジャ ソーユー ジーケー』というものです。これは、「雨だれ水は醤油使い」、つまり、「水は日照りがいつ来るかわからないので、醤油のように大切に使うように心がけなさい」という意味です。
☆埼玉県
♪「Part1」に、埼玉県の名産品「草加せんべい」の発祥について、次のような小話をお伝えしました。
○[こぼれ話]:草加は日光街道に面する宿場町で、旅人相手の何軒かの茶屋がありましたが、その中の茶屋のひとつに“おせんさん”というお婆さんがおりました。“おせんさん”は旅人に団子を売っておりましたが、売れ残った団子は川にすてておりました。ある時店に来た修行の侍が“婆さん、団子を捨てるのはもったいない。団子をつぶして平らにし、天日で乾かして焼餅(今のせんべい)にしてはどうかな”といわれました。“おせんさん”は修行侍の言う通りにして焼餅を売り出したところ、良く売れて名物になりました。これが「草加せんべい」の発祥といわれております。
☆福井県
♪「Part1」には、「精進料理」、「鯖街道」、「上庄里芋」についてふれました。
○[こぼれ話]:精進料理には食べてはいけない五つの野菜があります。それは、ニンニク、ネギ、タマネギ、ニラ、ラッキョウです。この五つの野菜の共通点は、同類の強精成分を含んでいることです。
○[こぼれ話]:実態よりも大きくまたは多くいうことを『鯖をよむ』と言いますが(年齢は少なめにいいますが・・)、この意味は、“鯖は非常に傷みやすいため、大量に収穫してもその数は時間をかけて勘定できなかったため、数をおおまかに(多めに)数えて出荷した”といわれております。
♪福井には、ブランドサトイモである「上庄里芋」があります。
○[ことわざ]:『家柄より芋がら』は、「家柄を自慢するのは何の役にも立たないが、すぐに食べられる芋がらの方が価値がある」、つまり、「家柄などよりも、すぐに役立つ能力のある人の方に価値がある」ということを言っております。
☆石川県
♪「Part1」には、加賀藩主・「前田家と東京大学との関係」をお伝えしました。
○[こぼれ話]:東京大学の本郷キャンパスの敷地は、前田家の藩邸のあったところです。有名な“東大赤門(1961年に修理され、現在は国の重要文化財です)”は、13代目の前田斉泰の奥方の住居の門です。前田家は百万石の大大名です。前田家のお殿様には側室が何人もいたそうで、正室、側室の住居の目印に赤門を置いたそうです。
♪「Part3」には、石川県の県魚は「サヨリ」です。
○[こぼれ話]:「サヨリ」は、白く細長い“スタイルの良い美人”ですが、腹の内側は黒い膜で覆われています。そこで、“見かけは良いが腹黒い”人を、“サヨリ野郎”とか“サヨリ女”などといいます。スタイルの良い美人に、決して“あなたはサヨリのような人ですね”などといわないように!
☆新潟県
♪新潟県の村上の名産は、「サケ」です。「Part3」には、サケについて書きました。
○[ことわざ]:『鮭は冬越しの薬食い』といいますが、「冬の鮭は特に栄養に富んでおり、食べると滋養になり、また薬代わりにもなる」、ということを表しております。
☆静岡県
♪「Part3」に書きましたように源平時代には、「伊豆は陸の流刑地」でした。
○[こぼれ話]:昔伊豆半島の一部は流刑地でした。平家に捕えられた源頼朝は、伊豆国・韮山(にらやま)に流されました。一方で、伊豆は昔から農産物、海産物、川の魚介などが豊富にとれるために権力者にとっては魅力的な場所で、この地を自分のものにしようとして政争も絶えませんでした。しかし、1497年に北条早雲が伊豆国を平定しました。1590年には徳川家康の領国となりました。
☆愛知県
♪愛知県には、「ひつまぶし」という誰にも知られる郷土料理があることを、「Part1」に書きました。
○[こぼれ話]:「ひつまぶし」の“正式な食べ方”にはステップがあります。最初は、茶碗に一杯取ってそのまま食べます。二杯目は、具としてネギ、ワサビ、のりを乗せて食べます。三杯目は、二杯目と同じようによそおったものに、お茶または店独特のたれをかけて食べます。四杯目は、一杯目から三杯目のうち最も気に入った食べ方で食べます。風流で面白いですね。
♪「Part3」には、「明智光秀」の茶坊主時代のことにについて書きました。
○[こぼれ話]:豊臣秀吉が羽柴秀吉と名乗っていたころに、長浜城主になりました。その頃にはかなり良い食生活をし、さらに、茶の湯をたしなみました。その時代に、ぬるめの茶、温かな茶、熱い茶の3段階に分ける気遣いをみせた“茶坊主”が、のちの「明智光秀」です。
☆岐阜県
♪「Part1」には、「長良川の鵜飼」について書きました。
○[こぼれ話]:「長良川鵜飼」によるアユの漁法の素晴らしさ、優雅さについては、源頼朝、織田信長、徳川家康などの大武将が感嘆し保護しましたが、明治維新のときには衰退しました。しかし、明治天皇が再興し、各地の鵜飼の中でも「長良川鵜飼」のみが皇室御用の鵜飼とされました。長良川の鵜匠は宮内庁の国家公務員(式部職)です。鵜匠は世襲で、山下家(2人)と杉山家(4人)が受け継いでおり、今は6人の鵜匠がおります。
☆三重県
♪「Part3」には、三重県の「伊勢海老」についてふれました。
○[ことわざ]:ビルマのことわざで、『エビは小さくても海を渡る』というのがあります。
「小さいものでもあなどってはいけない」ことをいっております。
☆滋賀県
♪「Par1」には、日本最大の湖「琵琶湖」についてふれましたが、日本の湖の面積についてみてみましょう。
○[こぼれ話]:日本の湖の大きさベスト5:琵琶湖(滋賀)(670.3km²)霞ヶ浦(茨城)、サロマ湖(北海道)、猪苗代湖(福島)、中海(島根、鳥取)。世界の湖の大きさベスト5:カスピ海(ユーラシア)(374000km²)、スペリオル湖(北アメリカ)、ビクトリア湖(アフリカ中央部)、アラル海(中央アジア)、ヒューロン湖(北アメリカ)。ちなみに琵琶湖の大きさは、スイスのレマン湖(580㎞²)より少し大きいのですが、淡水湖としての大きさは世界で129番目です。
♪「Part3」には、琵琶湖名産の「瀬田しじみ」について書きました。
○[ことわざ]:『内蛤(うちはまぐり)の外蜆(そとしじみ)』は、「家の中では強くふりまうが、外では意気地のない者」をさしております。
☆「京都府」
♪「Part3」には、京都の食文化、「鱧(はも)料理」について書きました。
○[ことわざ]:『鱧も一期、海老も一期』は、「海に居る鱧と海老とは形は違うが、それぞれがそれぞれの一生を過ごして終わる」から、「人の生涯にはいろいろ立場の差はあるが、等しく一生を終えるので、差のあるものではない」といっています。
☆奈良県
♪「Part3」には、古都を擁する奈良県民の、興味ある「県民性」についてふれました。
○[こぼれ話]:奈良県は、“バター、ジャム、コーヒーの支出金額”、奈良市は、“パンの購買額”が日本一です。一方、奈良県は、“人口当たりの飲食店の数”、“酒の消費量”は、日本で一番少ないというデータがあります。
☆大阪府
♪「Part1およびPart3」には、大阪人の食に関する考え方や性質をお伝えしました。
○[こぼれ話]:大阪の“くいだおれ”、京都の“着だおれ”、神戸の“履きだおれ”、東京の“飲みだおれ”などといわれます。“くいだおれ”の本来の意味は、“食べ物に贅沢して財産を失う”ことをいいますが、大阪では“本当においしいものを丁寧に食べつくす”という意味です。
○[こぼれ話]:大阪商人の“食”に対する特徴的な考え方のひとつに、“美味しいものを美味しく食べる”、“美味しいものを楽しく食べる”というシンプルではあるけど、人間の食に対しての本質的な考え方があります。このような考え方から、“美味しいものには貧乏になるまで食べまくる”といわれ、これが、大阪の“くいだおれ”として表現されようになりました。
○[こぼれ話]:大阪の商人から出た食文化があります。大阪商人は、食事や飲酒をしながら良く話し、コミュニケーションを大切にします。そこから生まれたのが、「カウンター食文化」です。カウンターを挟んで料理人と、あるいは隣の客と世間話や料理のことを話して交流を深め、商売にもプラスにしました。
☆和歌山県
♪和歌山県の「Part3」には、和歌山県が柿の生産量が日本一ですので、柿にまつわる格言を書きました。
○[格言]:『桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿、柿を折らぬのはもっと馬鹿』は、「桜の木や枝を切ると、花が少なくなり桜の花の豪華さがなくなる。梅は、大きな実をたくさん成らすために剪定をする。柿は実をとるときに枝が折れる」、これが、「大きな実を成らすための自然の剪定」である。ということを教えています。
♪次回は、中国、四国、九州、沖縄の各県の「こぼれ話」から選んでお伝えします。
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■参考にした情報・文献
“西野博士の食文化こぼれ話Part1およびPart3”をご参照ください。